序|1905年
<序>ロータリーは20世紀初頭のアメリカ・シカゴの地で創設された。まず、前世紀にボス政治の横行、大火、プルマンストライキ、Hay Market事件等で揺れに揺れたアメリカ・シカゴの昏迷した状況があった(アメリカ都市化の典型)。そこに、ニューイングランドの自然で「素朴な心持ち」を育み、5年間の放浪を通じ「得難い人生経験」を味わった、実直な一弁護士(PH.)が登場する。 彼の「友愛」への強い願いが醸成され、彼の友人達と交錯したところにその萌芽を見いだすことができる。 以来、1923年までの約20年弱が、ロータリーの創設から確立までの"揺籃期"と言えるのではないか? この間に「ロータリーを、ロータリーたらしめる」性格付けが成されたように思われる。すなわち超我・実践哲学としての"奉仕の精神"、基本としての「職業奉仕」の位置付け、決議23/34に集約された社会奉仕に対する基本方針(「奉仕団体ではなく、奉仕する人の団体たれ」)、国際的な友愛&援助(財団)の拡がり、親睦の心持ちと寛容の精神、「入りて学び、出て奉仕する場」としての例会の励行、一業一種の原則、宗教・政治との間合い等々が確立されたのである。 しかしこれは当時のロータリアン達を取り巻く世情、社会の動きとの関わり合いの産物でもあろう。その流れ・関わり合いを再確認することが新世紀ロータリーのこれからを占い、改善するヒントになると信じている。 以下ロータリーの"揺籃期"における世情、社会の動きをなぞる事とする。 ポイントとして拡大・激変するアメリカ国家の有り様-特にフロンティアの消滅、野方図な大資本の横暴等に対する「革新主義」、日米の関わり合いにも大きな影響を与えた「新移民の急増」、「大量生産・大量消費社会の出現」、その結果としての「大衆の成立(中産階級、サラリーマン社会の誕生)」、総力戦としての第一次世界大戦&国家意識の昂揚、戦後のウィルソン大統領による「国際連盟」の提唱、人道主義・国際協調等々を挙げたい。併せてロータリーの底流を流れるPH.等のリーダー達の個性も描いた。 私としては「今のロータリー」を考えるのに、第二次大戦後の連合国による「国際連合」の誕生と、ロータリー運動(NGO)との関わり合い、ポリオ撲滅運動に代表される「財団の拡大&肥大化」、その光と影、米主導体制を学ぶ必要性を感じているが、これは今後の課題としたい。
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