会員増強に思う

出筆者  原 幹朗
所 属 国際ロータリークラブ2780地区
相模原グリーンロータリークラブ

   

 相模原グリーンロータリークラブは、今年10周年を迎えました。
この間、過去の増強委員長としての体験(13名増強/年)および昨年度、会長としての実感を率直にお話したいと思います。皆様に何らかのご参考になれば幸いです。


 

[ 1 ] 増強の理念は?

(1) 基本理念の再確認
「増強」は昨今のRIでは最重点課題となっています。過去十数年は、このテーマに振り回されてきています。 このために定款、細則の諸変更までなされました。しかし、RI全体としての退潮傾向には、まだ歯止めがかかっていないのが現状でしょう。 その上でRIは今回のシカゴ規定審議会で「ロータリー100年祭までに150万人増強!」というアクセレートした目標を掲げました。(01−658案→前回未収録議案)

この課題に対してのIRと各RCの受け止め方に温度差があるのは否定できない事実でありましょう。 そもそも何故「増強しなければならな」のでしょうか? 先ずは増強の基本理念を再確認したいと思います。 手続き要覧15p〜で会員増強(Membership Development)について以下の記述があります。

 ”クラブが地元地域社会に根を下ろしかつ地域住民の要望に応えるためには、的確な人物を一人残らず会員に迎えることが極めて大事である。”要するに、増強の理念は「奉仕の輪をどこまで広げよう!」ということになる。 

 

再確認の(1)地元地域社会とは?

2780地区は首都圏でもあり都市型のRCが多くみられます。都市の発展と共に区分されたテリトリーならば良いのですが、オーバラップしたり、重畳になったテリトリーでは地元(我が町)が見えにくくなります。大都市の中で散布する会員相互にとっては、共通して肌身で感じられる地元はあり得ないからです。 地域に根を下ろしたことが難しいのです。また、複数クラブでオーバーラップされたテリトリーでは、互いにあなた任せになりがちです。「この地域(町)は自分たちのクラブしかない」というファイナル意識が育たないことになります。このように増強の前提であるテリトリーに多くの問題があるのです。

再確認の(2)地元住民の要望とは?

どう把握しましょうか? 現状では土台無理があります。これはロータリーのあり方にもつながる命題です。「奉仕団体ではなく、「奉仕する人の団体」として相応の奉仕が展開できればそれで良し!」とするのがその答えでありましょう。大事なのは奉仕の実績ではなく、奉仕の実感(やってよかった!そこそこお役に立てた!いろいろ工夫した!みんなで汗をかいた!)であると信じます。ただ地域についての問題把握は欠かせません。「地域学」の叫ばれる所以でありましょう。

再確認の(3)的確な人物を1人残らず?

まず「適格な人物」とはどんな人物なのでしょう?各RCでの組織風土が異なるので一概には言えないかもしれません。

しかし「思いやりに溢れ、それなりに奉仕への余力のある人」が基本でありましょう。その意味では各業界のボス、地域の顔役が常に的確であるとはいえないのです。「思いやりを育てる団体」であるロータリーの素地作りは慎重であるべきです。本当に良い人を求め続けるべきです。会員増強が”Menbership Development"であることを忘れてはなりません。さらに「1人残らず」でありますが、これも程度と増強ペースで慎重であるべきです。手続き要覧では「クラブが勝手に会員数を制限することは、ロータリークラブの原則に沿わないし、また反することである」と強調しています。しかし皆さまもお気付きのことと思いますが、会員増と親睦活動とは相反する関係にあります。そのクラブの程(テリトリー状況、実態)を考えながらマイペースで着実に取り組む必要があります。指示されて行うことではないのです。増強の一応の目安は、全国平均の50余名でありましょう。これがクラブ財政上、活動上の1人前の規模であると判断します。さらにその中で多彩な職業人、幅広い年齢構成、偏らずテリトリー全般に位置する会員たちを模索することが課題です。60名以上を目標にするときには、それを求める奉仕課題が前提であるべきです。節目をを大事に、一歩ずつ着実に取り組ましょう。安易な「増強のための増強」は、後で必ず歪を生じます。

結論

各クラブでもう1度増強の意味を再確認する必要があります。「増強のための増強」では意味がありません。「意味への意志」を持ちましょう。ロータリーのあり方・本質、RIの動向、RIの願いと課題、地域社会・テリトリーの現状、自クラブの課題などを踏まえ、「自クラブなりの増強目標」を打ち立てるのが重要です。ただし数字上の現状を維持でも、年齢構成等から入れ替え増強は欠かせません。現状維持目標でも、年度当初では、全会員数の1割程度の増強目標は立てざるを得ないのではないでしょうか?

(2)2780地区の拡大・増強

当地区の拡大・増強も厳しいものがあります。最新のがバナー月信(2001/3月号)によると地区内69クラブの内、3月末現在で10人台が4RC,20人台が9RCもあります。大変ご苦労されている訳です。さらに今年度中に、すでに10人以上、会員数を減らしているクラブも見受けられます。1人前のクラブ規模と思われる50人超のクラブは27RCで、全体の40%程度に止まっています。さらに約半数の32RCが年初比で会員数を減らしている現状です。全体では18名の会員増を確保していますが、横須賀他の数クラブの大増強並びにふじさわ湘南RCの拡大をもって到達した数字で、全体の退潮傾向に歯止めはかかっていません!今年度末にさらなる会員減は避けられないのではないでしょうか?まことに由々しき状況であり、本質的に解決策が求められています。その中で、今後は「少数会員クラブ同士の合併」もあり得るでしょう。またテリトリーの見直しも必要でしょう。これらは、新設のガバナー補佐の初仕事になるのかもしれません。加えて地区同士の合併もないわけではありません。ともあれロータリー運動の今後のあり方、方向性は地区全体の課題でもあるのです。


[2] クラブ・レベルでどう取り組むか?

<1> 自クラブの現状把握

 (1)まずは自クラブ会員のロータリー観,組織風土の把握をきちんと行いましょう。自クラブの姿をフォーラム等で話し合い、全員で共有するのです。心合わせが肝要です。「1人前のクラブであるのかないのか?」「そもそも1人前のクラブを目指しているのか?」、「クラブライフの基本にロータリー運動がビルトインされているのか?」「奉仕の願いよう高く掲げているのか?」、「ただの昼食クラブに堕していないか?」、「ロータリーでしかできないことを求めているのか?」。「適当にまぁーまぁー!がクラブの風土になっていないかどうか?」などの点検であります。全員で再確認した「ロータリーのあり方」、「ロータリーとは?」の答えを、自分たちの言葉で文章化しましょう。実感ある言葉での表現です。これこそが増強勧誘の際の基本なのです。以下当クラブの事例を紹介致します。

 

[ ロータリーとは?]

1. 地域に根差した「職業法師が基本」

  それぞれの職業倫理の向上を求めています。さらに「わが町の奉仕」、「新世代との共学&育成」などにも目配りしています。なによりも「思いやりの心」を育てるのが、ロータリーの使命です!自然体で、人様のお役に立つことを目指します。

2. 会員はすべて平等を!

  ことさらに、偉い人を作らない知恵と仕組みがあります。老・壮・青の「世代を超えての励まし合い」、損得抜きの「爽やかで、ほのぼのとしたお付き合い」。そして人生にリズムを与える、週一回の例会(昼食会・夕食会+卓話等)。励まし合いと、濃密なふれあいで、生涯の友も生まれるのです。

3. 国際的な拡がり、奉仕の輪!

  全世界(163カ国、約118万人の会員)が活動の舞台です!国際的な奉仕事業も活発に実施中(ポリオ撲滅運動等)。世界最大級で、かつ国際親善に徹した奨学事業。即応型災害援助。多くの外国人との新鮮な交流!あなたもいながらにして、国際人になれます!

4. もうすぐロータリー100周年(1905年を〜)!

  長期にわたって洗練された歴史が、その正当性を証明しています。しかし21世紀の人類は様々の課題を抱えています。激変する地球環境を背負う大きな節目の時期、その悩みは尽きません。ロータリーはあるべき未来を模索しつつ、「思いやりに溢れた人材集団」を目指します。あなたも共々、21世紀の人類を支えませんか?

(2)次に自クラブの会員構成の把握が必要です。会員の年齢分布、所在地分布を確かめるのです。重畳的なテリトリーであるなら他クラブとの比較も意味があります。自クラブは高年齢化しているのか?老・壮・青のバランスは良いか?次世代を担う会員層は育っているか?偏らずテリトリー全般に会員が位置しているか?職業分類の偏り具合いはどうか?等であります。きちんと把握できれば、もっと「的を絞り込んだ増強活動」が展開できるでしょう。ちなみに当クラブは40歳前後&テリトリー内数カ所に絞り込んだ増強をイメージしています。

(3)テリトリーの現状を把握

  1. まず第一に、「わが町」はどうなっているのかを調べる必要があります。社会奉仕委員長等の「その時々の思いつき奉仕」では、会員に「やって良かった!」の実感が湧きにくいのです。その前提として、クラブ全体での「わが町の問題、課題」を把握する日常的な努力が求められます。肌身で感得できるもの、行政、地場マスコミからヒアリングによるもの、各種行政資料等から推察できるもの等があるでしょう。大事なことは毎年、全会員が、テリトリーの奉仕課題を考え、意見交換する機会を提供されることなのです(フォーラ、家庭集会単位でのミニ地域奉仕など)!そうすれば「クラブ全体としての地域奉仕」の積み重ねがなされ、奉仕の味わいが深まると信じます。ポイントは継続事業ではなく、継続課題追求であり、継続奉仕コンセプトであります。言い換えるならば「地域学」の継承であります。(例;峡東RC(友誌1999年9月号13頁))はっきりとした、わが町改善の願いを下敷きにした増強は力強いものになると信じます。やりがいを訴えるのです。

 2. 第二に、重畳的なテリトリーであるならば、他クラブの奉仕活動の把握も欠かせません。市民から見れば・・・東RC,・・・西RC、・・・南RC、・・・北RCとも違いは分からず同じロータリーです。いたずらに重複した奉仕を展開したり、偏った奉仕分野であったりしたら、ロータリー全体が評価されなくなります。他クラブの奉仕の方向性をきちんと把握しつつ、「われわれは異なった何を目指すべきか?」という発想が大事です。(大テリトリーをでは数クラブでの合同奉仕で実を上げる取り組もう要検討)ともあれ、自クラブの特徴づけが出来なくして、新会員を勧誘が出来るわけがないのです!これまた勧誘の際の基本なのです。

<2>HOW TO 増強!

私は"HOW TO"は「全員の心あわせ」の基本をしっかり押さえておけば、そう難しくはないと思います。何よりみんなが、クラブライフを意義深く、楽しく感じているかが前提となります。自信を持って本心から仲間を求める心、同志を求める心です。(常時求友!)「如何に?」の知恵はその後からついてくると思います。その意味では、味わいのある”ほのぼのときめき例会”の実施も肝要です!これも実現にはひと工夫が必要でしょう。前年度からの入念な準備が決め手であると判断します。取り敢えず、ここでは当クラブでのいくつかの"HOW TO増強"を紹介することといたします。

1. 被推薦者リスト(Nominated List)

入会候補者を絞り込む工夫であります。勿論、どこでもやっているとは思います。しかし、当クラブではささいな情報をしっかりフォローして、取捨選択し、確かな候補者群を顕在化するべく工夫しています。ポイントは年間で20数回に達する改定作業です。しかもリストは毎回全員に配布します。(勿論、クラブ外秘)ささやかな情報は、さらなる情報をリクエストとなり、全員からの多面的なチェックも加わります。このリストを継年にて活用するので、リストは熟成されたワインのごとく価値ある、しかも瑞々しさ失わない宝となります。常に10数名の入会可能性大の候補者を抱えて、その機会、タイミングを捉えるようを努力しています。推薦者、被推薦者の様々の重み、不安を全員で背負うこともその目的です。我々のクラブでは候補者の存在が常に明確なのです。

2. 複数会員とのほのぼの会食

 「入会可能性大、本人のタイミング良し!」となると複数会員との会食をセットします。会長・幹事はもちろん、増強委員会、候補者の近住者、候補者の同窓生、候補者の同趣味者、同世代と等多くの「のり代となる会員」に協力を要請します。会合ではロータリーの良さ、現状と課題を、自クラブの特徴等を丁寧にお伝えします。しかし最終判断はあくまで本人次第!たとえ駄目でも広報活動だと思って頑張ることとしています。生涯のお付き合いを目指すわけですから、基本は「3顧の礼」でありましょう。

3. 出席の程度をはっきりさせる

 ロータリー入会候補者の最大の懸念は「毎週出席」であります。リズムができてしまえばそれほどでもないのですが、最初はとても重苦しいそうです。この点我々のクラブではきちんと整理してその意味をお伝えしています。まず出席規定のうち、

  (1)修正60%以上の規定についてはクラブ理事会判断による免除(この数年継続)

これはメーキャップ状況改善(そこらで出来る!)による、督励を目的とした出席競争の廃止を見据えての判断です。

  (2)連続4回ノー・メーキャップの規定も同様に免除。

  (3)ただしホーム例会出席率30%以上の規定は、理事会の特例なしの厳正適用としております。

ロータリーが仲間とのふれあいを基本に成り立っている以上、クラブ内の最低のふれあいは欠かせないと判断したからです。半期約8回のホーム例会出席だけは、入会候補者に強く求めてます。後はおまけでもOK!だんだん自分のペースでリズムを作ってくださいとお伝えします。必須の、しかも達成しやすいバーを最初に提示するのです。これも出席ルールの意義、意味を共有することからです。(なおシカゴ規定審議会では当クラブの判断と同様に改訂される見込みです)

 

4.入会後のフォロー

入会後のフォローは当然です。しかし日常的なクラブ活動の中で消化できると思います。特段の入会者フォロー策は加速された増強時(10人以上?)のみのことでしょう。当クラブでは13名入会年度の後半、毎週例会の夜に場所を固定して「金八会」(金曜日夜8時から新会員中心)と称するオープンフォーラムを実施した。会長・幹事と増強委員長が毎回参加し、延べ30回にも達しました。つらかったけれど今では良い思い出です。

 

5. 最後に退会者防止

これも特段の取り組は行いません。きちんとしたロータリーらしい活動の展開に尽きるのではないでしょうか。それで辞める人はやむなし!ロータリーは任意団体「去る者は追わず!」であります。ただしクラブライフの中で「常在隣友」の心持ちと思いやりは大事でありましょう。互いの顔しっかり見つめ合うことです!